これまで多数のAIチャットボットを作ってきた筆者が学んできたことを紹介します。
1. チャットボットにしか出来ない事とは?
大昔から人は対話することで直接問題を解決してきました。
AIチャットボットはそんなはるか昔の時代を思い起こさせるようなものです。
現在の主なAIチャットボットは、アプリほど豊かなGUI(=グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を提供するわけではありません。
対話を使ったこのインターフェースは、シンプルであればあるほどその効果を発揮することができます。
1-1. AIチャットボットが使われる主な理由
1. 対話性:問題解決のために複数のインプットが必要なため、アプリでは適さない場合
2. シンプルさ:ボットが問題に対して即時に直接的な解決策を提示できる場合
つまり、複数の対話入力を必要とし、アプリよりも単純に問題解決する手段としてチャットボットが有効であると言えます。
一つのアプリだけでは全ての問題は解決できませんが、いつか一つのボットがそれを可能にするかもしれません。
例:DoNotPay → 路上駐車の罰金を払わなくてもいいように解決策を提示してくれるチャットボット弁護士
1-2. 機械学習を適切に活用するには
人工知能の技術は未だ発展段階にあり、実用化へはまだ長い道のりがあります。
機械学習は、ある一定のパターンがはっきりしていて、明確に定義がなされているような分野では優れた働きをします。
たとえば、医学や雇用、法律などの分野では大きな効果を発揮しますが、交渉やクリエイティブな問題解決、コミュニケーションやマネジメントなどの明確なパターンがない分野での運用は不適切です。
1-3. 人工知能や機械学習の効果的な運用例
Ross Intelligence:弁護士の判例調査や顧客のアドバイスなどをサポートするAI弁護士
Predicting Cancer:医者の診断より正確に肺がんの種類、重症度を分析するコンピュータ
Gradberry:AIを使ってプラグラマーの書くコードを分析、理想の会社とマッチングするサービス。(転職活動もなくなるかも?)
チャットボット選定で“絶対に外せない”3つの確認ポイントとは?
本資料(無料 eBook)をご覧頂ければ、以下の事がスムーズに出来る様になります。
- 選定候補のAIチャットボットを客観的に比較する事
- 実機トライアルで準備・確認すべき事
- 自社に最適なサービスを見つけ、失敗せずに導入する事
2. WeChatなどの先駆者に学ぶ事とは?
近年のFacebook Messengerチャットボットが目指す目標ははっきりしています。
Facebook MessengerのプラットフォームはWeChatと似たような環境になるよう開発が進められていて、実際にFacebookのデベロッパーはWeChatを開発の参考にしているのです。
2-1. WeChatでは実際になにができるのか?
・チャットでサービス手配:WeChatを通じて様々なサービスを手配することができます。家の掃除や配管トラブルなどがチャット上で瞬時に手配できます。
・外食がストレスフリー:WeChat上でメニューの注文も支払いも可能。レストランに行って食べるだけ!WeChatは飲食業界に革命をもたらしました。(現在Allset社が提供するサービスです。下記補足)
・流行発信:膨大な機能を一つのアプリにひとまとめにすることで、アプリを通じて様々な流行を発信しやすい。
2-2. 近づく飲食業革命
Allset社の創設者、CEOであるスタス・マトヴィエンコ氏は、
「飲食業革命はもう起こっている。
新しいテクノロジーによって、従来のレストランのモデルや、店舗と顧客の関わり方が変わってきており、より多くの飲食店が消費者へ直接サービスを提供しようとしている。
Facebookは消費者に新しい経験を提供するビジネスに素晴らしい機会を創り出した。」
と語っています。
3. アイデアをChatfuelで試し、Gupshupで瞬時に展開する方法
Chatfuelはコードを書かずに10〜15分でボットを作ることができるので、思いついたアイデアを忘れないうちにテストすることができます。
3-1. Chatfuel
Chatfuelを使って次の3つを確認することができます。
1. コンセプト:ボットが本当に役立つ問題の解決をしているか?
2. ユーザビリティ:使いやすいボットであるか?問題解決へのフローは明確であるか?もし明確でない場合、ユーザーはどの時点で利用を中断するか?
3. 文章力:ユーザーの入力を正しく理解し、素早く解決策を提供できるか?
3-2. Gupshup
作りたいボットが決まったら、Gupshupがおすすめです。
1. 簡単に使用でき、プログラミングは最小限に抑えられる:数時間で作成、稼働開始ができる。
2. 瞬時に多数のプラットフォームで公開できる:Facebook Messenger、Twitter、Telegram、Slack、SMSなど
3. 自然言語処理が可能:シームレスにWit.aiに接続できる
Facebook Messenger チャットボットを1時間で作る方法
3-3. 夢中にさせるボットを作るには
消費者を対象にした多くの商品の目的は消費者の需要を繰り返し満たすことです。
効果的にこの目的を達成するには、消費者の需要が発生した瞬間に商品を提示し、需要を満たすことが重要です。
とても難しく思えますが、これにはコツがあります。
消費者の需要を繰り返し満たしていくことで、需要が発生したときに自動的に商品を思い浮かべるような流れを作るのです。
この流れを作ることで、需要発生から商品利用までの流れがスムーズになり、やがてはそれが習慣化し、その商品は人々の生活に欠かせない必需品になるのです。
このような商品を、提供者からの立場では「心的財産」と呼びます。
チャットボット選定で“絶対に外せない”3つの確認ポイントとは?
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4. きっかけを作る
消費者の需要はなにかのきっかけで発生します。
きっかけが発生する要因は内的なものや外的ものがありますが、そのきっかけで消費者が需要を満たす方法を探し、やがて需要が満たされます。
このきっかけが発生したとき、私たちは需要を満たす方法を探すか、需要を無視します。
消費者に需要が発生したとき、商品は消費者にとって簡単に探し出すことができ、また簡単に需要を満たせるものである必要があります。
5. アクションを取らせる2つの要因とは?
ボットがユーザーの需要を満たす方法の一つと認知されれば、次はユーザーが実際にボットを見つける、利用するようというアクションをとる2つの要因を見てみましょう。
・モチベーション:ユーザーの需要(解決したい問題)が深刻であるほど、ユーザーはアクションを起こす可能性が上がります。
・簡易性:ボットが見つけやすく、使いやすければ、さらにユーザーのアクションを誘引しやすいでしょう。
需要が繰り返し満たされ、需要発生から商品利用までの流れがスムーズになると、習慣になります。
どのようなきっかけで商品が必要とされるのか、またどうすれば需要を満たすために選ばれるような商品になるのかを考慮しなければいけません。
ボットが問題解決に選ばれるようになったら、この流れを自動的なものにしてみましょう。
良い問題解決はドーパミンが分泌されるほどの大きな満足感をもたらします。
問題が解決するだけでなく、気持ちのいい気分にもなれるのです。
6. ランダム性を加える
同じ問題に同じ解決法を提示していくと、「退屈」という新たな問題が生まれます。
毎日行う仕事のようなルーチンワークは退屈を生み出します。
それを解消するため、私たちは普段しないようなことをしたり、旅行に行ったり、新しい人と出会ったりします。
もしボットが提案する問題解決が安定しており、信頼できるもので、かつ不規則なものだったらどうでしょうか?
私たちは報酬を期待しているとき、ドーパミンの分泌量が上昇します。
ランダム性を加えることでドーパミンの分泌量はさらにあがり、判断を司る脳の部位の働きが抑制されることが研究で明らかになっています。
これがギャンブルに熱中して何時間も遊んでしまう人がいる理由です。
ボットにもランダム性を与えてみましょう。
フェイスブックでは、たとえ10人しか友達がいないようなアカウントでも、フィードに表示される情報を不規則にすることでランダム性を組み入れています。
フック・モデル
7. スイッチング・コストを上げる方法
人間関係にもあてはまることですが、ボットや特定の商品に使った時間や、仕様に慣れるために費やした労力が大きければ大きいほど、代替品を使うときに感じる不便さは強く感じられます。
この「慣れ」によって、消費者は特定のサービス/商品から離れにくくなります。
例えばフェイスブックなどで友達と繋がっていたり、写真などを共有しているユーザーはフェイスブックを使い続けるでしょう。
ユーザーが慣れ親しんでいればいるほど、代替品への抵抗感は強くなります。
フック・モデルにピンときたら、ニール・エヤール氏の「Hooked」を読まれることをおすすめします。
7-1. チャットボットの文章の重要性
クオリティの高いボットを作るうえで欠かせないものは良い文章です。
使う言葉によってユーザーは何時間も夢中に、あるいは一瞬でやめたりすることもあります。
8. シンプルにする
軍隊が戦闘に備え、作戦を遂行するために軍人に下す命令はなんでしょうか?
刻一刻と変化する戦場において、どんな複雑な状況にも対応するように命令することは不可能です。
「シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしいときがある。
物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。
だが、それだけの価値はある。
なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ」
by スティーブ・ジョブス
この複雑性が生む問題に対して、軍隊は一つの中核目的に集中することで対応します。
これを設定するうえで必要なのは、「たった一つの目的だけ達成するなら何を目的にするか?」を考えることです。
一つの目的に集中することで、隊長は必要でないものを取り除き、焦点を絞ることができます。
隊長は目的を設定し、兵隊はその目的の達成方法を考えます。
良いチャットボットは一つの目的に集中している必要があります。
焦点がぶれるような要因は取り除かなければなりません。
9. 具体的であること
なぜトランプ氏が米大統領選で当選することができたのか、考えたことはありますか?
様々な要因はありますが、大きな理由が2つあげられます。
トランプ氏の言葉遣いと具体性です。
トランプ氏の使う言葉に注意してみると、彼の話し方で気づくことがいくつかあります。
1. 具体的な言葉:彼が使う言葉は具体的に想像しやすく、短い言葉です。長い言葉は全く使いません。
2. 繰り返す:しばしば決まった言葉を文末に繰り返し使い、強い印象を残します。
3. 簡潔さ:トランプ氏は短い言葉や文をよく使います。
9-1. なぜこの話し方が効果的なのか?
それは、トランプ氏の発言の理解の容易さにあります。
トランプ氏の話し方は具体的で短く、すぐに想像できるような言葉が多いので、意識しなくても理解できてしまうのです。
例えばイーロン・マスク氏の話す人工知能について、スティーブン・ホーキング氏によるブラックホールの解説と比べると、差は歴然です。
9-2. 意識すること
- 「壁」など、具体的な言葉を使う
- 短い文と間を使いこなす
- なるべく短い言葉を使う
- 文字数を少なくする(ユーザーが意識せずに文の全てを読めるような長さが理想)
- 専門用語は使わない
- 「個性」のような抽象的な言葉は避ける
- 複数な選択肢や複数のメッセージは送らない
10. 予想を裏切る方法とは?
私たちは常に次になにが起きるのかを予想しています。
興味や関心をひきつけるのに一番良い方法はこの予想を裏切ることです。
人は予想を裏切られると、次になにが起こるのか、気になって集中して見てしまうのです。
予想を裏切られた瞬間、人はその対象に集中しています。
答えを探しているため、この集中はとても強いのです。
予想が裏切られたことで、人々が知覚している現実は100%正しいものではないことが示されました。
この誤差を修正する際に新しい情報を効果的に提供するチャンスが生まれます。
このチャンスを活用することができれば、人々は新しい情報を学び、あなたは「心的財産」を得ることができます。
この貴重な機会を見逃したり、小手先で問題を解決しないこと。
注目を失わないようにするには、常に新しい情報を小出しに提供する必要があります。
次になにが起きるのかが気になり、人々は夢中になります。
10-1. ユーモアを使う
基本的にユーモアは予想を裏切り、新しい視点を提供するものです。
オチ:コメディアンが何か非日常なことを話し、後にそれをオチに使うことです。
ミスディレクション:コメディアンはしばしばわざと話をミスリードさせ、意外な結論を持ってくることで笑いを誘います。
ボットとユーザーの3300万以上のやりとりを分析する会社、Dashbot.ioのアート・メリット氏によると「フェイスブックのボットの12%がユーザーからジョークや面白い話をするように指示された」としています。
10-2. 信頼
皮肉なことに、数々のボットが信頼性に欠けているのが原因で失敗します。
一番良い解決策は購入前に試してもらうことです。
10-3. 深い繋がり
ユーザーとの深いつながりを構築することです。
仕事において人間関係は重要です。
ユーザーとの深いつながりをもつことが成功の鍵です。
関係性が重要なマーケティングなどに関して、ボットは素晴らしいツールとなるでしょう。
深いつながりを得るには:
ユーザー本位:ボットの特徴を考えるだけでなく、どのようにユーザーに貢献できるのかを考えましょう。
感情に焦点をあてる:良いボットはユーザーにある特定の感情を抱かせます。
動機づけ:ボットを使うユーザーは理由や動機があります。なぜこのボットを使うのでしょうか?
人々が望んでいて、滅多に得られないものはなんでしょうか?
人々は自らの知性や価値を披露したいものです。
人に知識を披露すると、どのような反応になるでしょうか?
たいていは邪見に扱われたり、「それは違うよ」と正されたり、もしくはより深い知識を披露されたりするのではないでしょうか。
承認を得ることはたいていの場合とても難しく、だからこそ人々は強く望んでいるのです。
効果的なボットは人々のありのままを受け入れ承認欲求を満たすことで良い気分を抱かせます。
その結果、ボットとユーザーの間でとても強いつながりが生まれるのです。
10-4. 無条件の関心
心理カウンセラーの必要十分条件の一つであると言われています。
ユーザーの発言に対して価値判断をせず、ありのままに受け止めることで、ユーザーがより深いつながりを求めやすくなります。
10-5. 「理想の自己像」へ導く
私たちはそれぞれ今の自分と比べてより良い存在である「理想の自己像」を持っています。
この理想像に近づくべく、私たちはしばしば自分たちの行動や暮らしを評価します。
効果的なメッセージを作るには:
- ターゲットが誰なのか
- ターゲットの「理想の自己像」は何か
これまでのポイントを使って中核目的、価値、メッセージをターゲットの「理想の自己像」に届けることができます。
ご一緒に理想的なチャットボットを作りましょう。
著者
Stefan Kojouharov
Smart Notes Botを含む、多数のAIチャットボットの開発者。
企業のAIチャットボット開発に協力し、そこで得た見識を共有するChatbot’s Lifeの創設者。
現在AIチャットボット開発に関して企業へコンサルティングを行っている。
原文
https://chatbotslife.com/10-tips-on-creating-an-addictive-chatbot-experience-b796ea6d1178
チャットボットライフとの提携により、翻訳し掲載しています。
チャットボットライフとは、最新のボット、AI、NLP、ツール等を扱うメディアです。