法律・法曹界の未来とリーガルテックAIの破壊的技術

あらすじ

法学部教授、また企業内弁護士であることがこんなに楽しかったことは過去にありません。

奇妙に思われるかもしれません。なぜなら今日のロースクールは魅力を失い、法学部の学生に就職市場は冷酷で、法曹関係者は多くの挑戦と不透明感に直面しています。

それなのに法学部教授であり企業内弁護士である私が心躍っているのは何故でしょう?

手短に言えば、その答えは「破壊的技術」です。人工知能、ロボット工学、オートメーション化などの新しいテクノロジーが、弁護士という職業の意味を変化させているのです。

そしてこれらの変化を理解し取り入れる事が今日の全ての弁護士と法学教授にとっての挑戦となります。

法曹関係者にとって今は大変に不透明な時代ですが、絶好の機会とも言えます。とりわけ「未来の弁護士」がどのようなものであるかを定義する機会です。

SF弁護士の事を考える時期が来ています。考えてみてください!他ジャンルの本、映画やTVには弁護士がよく登場しますが、SF世界で弁護士がヒーローになることはありませんでした。

近い将来の弁護士の役割と機能を予想するには、破壊的技術が私たちの世界をどの様に変えているのかを理解する必要があります。

「二つの平行する世界」の出現

急成長する破壊的技術が私たちの世界を変化させている事には異論がないでしょう。

ネットワークテクノロジー、ソーシャルメディア、P2P(ピアツーピア)プラットフォーム、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーン、オートメーション化/ロボット工学、そして人工知能。

イノベーションの連続波は日常生活における全ての側面を変化させる新しい技術のインフラストラクチャを作り上げています。

これらの変化が新しい「デジタルワールド」を創造します。これはコンピュータコード、アルゴリズム、流動性のあるアイデンティティ、進化形の資本主義を取り巻き急激に変化する世界です。

加速するイノベーションと共にあるこの世界は「新しい革袋の古い酒」よりももっと大きな意味を持ちます。

大切なことは、この「デジタルワールド」は古い「アナログワールド」と完全に世代交代したわけではなく共存しています。

「アナログ」と「デジタル」―絶えずお互いに磨きあっている2つの言葉-が織り成すパラレルな現実の複雑な空間に私たちは生きています。このパラレルな現実に存在する緊張感が私たちの時代の特色と言えます。

この新しいデジタル・リアリティの輪郭と意味がしばしば不明瞭なため複雑にさせています。このような不明瞭さへ対応するために、「古い世界」のコンセプトとパラダイムを応用し新世界を理解し管理さえしようとすると、結果は分断されてしまいます。

代わりに私たちがするべきことはこれらの多現実の違う側面をマッピングするために新しいパラダイムを創り出すことです。

これらのパラレルなリアリティ間の橋渡しができ相乗効果を創り出せる個人は価値を付加するために最適な人でしょう。

「トワイライトゾーン」の弁護士

法律の分野において、デジタルリアリティの出現により引き起こされた不確実性はとりわけ切迫しています。しかし「新しい普通」への正しい答を認識するのは容易ではありません。

ただ明らかに言えることは20世紀の考え方はもはや妥当ではないという事です。工業生産や境界で分けられた国の時代に発展した考え方は、地球規模で繋がっている年代には最早適切ではありません。

このパラレルリアリティの新世界で、弁護士と法曹関係者がより良い方向を見極めるための4つの提案を以下に記します。

1) リーガルテックとアルゴリズムの理解

リーガルテクノロジー(リーガルテック)は法律業務の行い方を変化させています。コンサルティング業界において、法律は最も議論の多いエリアだと言って差し支えないでしょう。

リーガルテックとは弁護士事務所や弁護士が業務を効率的に行えるように作られたプラットフォーム、ITサービス、ソフトウエアの事です。

業務管理、書類の保管、請求書作成の自動化、会計などは分かりやすい例です。リーガルテックは弁護士の注意義務、証拠開示手続きの手助けもします。

それだけではありません。近い将来のテクノロジーの進歩(明白な例は人工知能、ビッグデータ、オートメーション化)はすでに弁護士や法曹関係者の仕事を交代し始めています。

人工知能ツールはクライアントが法的書類のレビューや理解する事を手助けし、ドラフトまでします。マシンラーニングとデータアナリティクスは法律のリサーチだけでなく、法的判断や訴訟の結果予想までも手助けします。

もし将来、法律業務がアルゴリズムに依存されるなら未来の弁護士(とキャリアをスタートしたばかりの弁護士)にとって「マシンラーニング」と「人工知能」についての深い理解が非常に重要であることは明らかです。

2) 「弁護士」から「プロジェクトマネージャー」へ

リーガルテックが契約書のドラフト、法的なリスクマネジメント、争議の解決などの「リーガルワーク」を自動化するのは疑いの余地がないでしょう。

しかし、これは弁護士とリーガルアドバイザーの終焉を意味するのでしょうか?もし弁護士がプロジェクトマネージャーとしての役割を担うことができるなら答はNoです。

多岐に渡る専門分野のチーム内で働く能力はより大きな意義を持つことになります。「デジタル」の世界では会計士やフィナンシャルアドバイザーだけでなく、エンジニア、デザイナー、建築家や他の専門家(その時のプロジェクトによる)と密に働く必要がないのです。

法律事務所は法律家と他の専門家を繋げて共同作業するためのプラットフォームとしての役割が強調されるでしょう。

仲介業務やプロジェクトの共同作業のプラットフォームとして、弁護士やリーガルアドバイザーはネットワーク・テクノロジーの活用の仕方をよく理解しているべきでしょう。また、ソーシャルメディアを活用し独自のネットワーク作りも始めるべきです。

3) 「オープンな組織」への助言

少ない資産と従業員だが速いペースで成長するテクノロジー企業は、「デジタルワールド」の中心となっています。

成果を上げている企業はネットワーク・テクノロジーの好機を見逃さず新しいビジネスモデルを展開してきました。

従来、信頼や価値、富は従業員や物的資産の管理によって作られてきましたが、今はプラットフォーム、コネクションとネットワークにより作られています。

重要なことは、このイノベーション主導型の経済の中で多くの法律事務所は、新しい商品とサービスを届けるために新しい組織の形とガバナンス構造を取り入れています。

それらの組織の主な特徴は何でしょう?ミレニアル世代の才能と消費者に訴求するために法律事務所は使命重視型になり、組織内序列は「ベストアイデアが勝者」文化に置き換えられ包括的な組織文化と実践を重視しています。

しかしそれらの「新しい」事務所はしばしば、新しいガバナンスモデルを維持したり、当初の約束を守るのに苦労しています。

未来の弁護士は「デジタルワールド」の機会と挑戦を理解し、法律事務所がもっとオープンで包括的であるためにガバナンスの徹底的な見直しをするでしょう。

4) ブロックチェーンとスマートコントラクトの導入 

スマートコントラクトは契約の内容の検証、執行、実行を自動化するコンピュータプログラムコード、またはプロトコルです。

コンピュータ・サイエンティストで法学者であるNick Szaboにより1994年に提唱されました。

例として車のローンなどの重要な要素としてスマートコントラクトの構想を立てました。もし借り手が返済条件を守らなかったら、スマートコントラクトにより車の使用ができなくなります。

スマートコントラクトが、成長するIoTの世界で広く普及するであろう事は明らかです。より多くのデバイスが相互に繋がり、より多くの「スマートコントラクト」はリーガルトランザクションの執行、実行に使用されるでしょう。

ブロックチェーン技術はトランザクションを検証可能で安全にすることができます。ブロックチェーンとは、デジタルデバイスとアセットを持つ参加者間で行われる取引の、増加し続ける記録のリストを保持するデジタル台帳(データベース)です。

ブロックチェーンは、「スマートコントラクト」による取引のために必要な情報の事実性、信頼性、信憑性を保証します。

ブロックチェーンとスマートコントラクトの組み合わせが従来の法律の前提や原則、概念を破壊する事は疑いの余地がありません。

例えばそれは(不動産法への影響を含めて)シェアリングエコノミーを後押しするでしょう。他の例は、ソフトウエア、コード、スマートコントラクト上に作る「会社組織」の設立です。それは伝統的な会社法への挑戦となるでしょう。

私が心躍る理由

急成長するテクノロジーとそれによる社会の変化を私は全く恐れていません。むしろ好機としてとらえています

企業内弁護士として好都合な事は明らかです。標準化された作業や法情報のリサーチをアルゴリズムが行う事ができれば、デジタルの世界に挑戦している社内クライアントのために遣う時間を増やせます。

法学教授としても、アナログワールドからデジタルワールドへの移行はエキサイティングな事です。新しい技術をとりまく法的な影響をリサーチするのはとても楽しい事ですが、法律について知っていると思っていたことを再考するのもまた魅力的です。

同じことが法学教育にも言えます。デジタルワールドにおける新技術は教授や他の教育者を振り出しに戻します。私達の課題は明らかです。

現在と未来の法学部学生の就職機会を維持しつつ、関連性を保ちながら新しいコースを創造する事です。

オランダのTilburg大学の私の国際ビジネス法のプログラムでは間もなく「弁護士のためのコーディング」、「弁護士のためのマシンラーニング」、「オープンな組織の法律」、「リーガルテック」などのイノベーティブコースを開講します。

これらのコースは伝統的な法学の講義とは異なり、ラボでの授業、グループのプロジェクト、1対1のメンターシップ、ハッカソンなどを取り入れます。

この新しい世界では私達は皆、SF作家のようにならなければなりません。少なくとも、破壊技術により作られた新しいリアリティに対応するために私達は今、弁護士の未来の役割を思考し業務を変化させてゆくべきでしょう。

それにより今日のSF作家が未来の弁護士を想像することが簡単になることでしょう。

原文

https://chatbotslife.com/the-future-of-law-lawyers-and-law-professors-and-the-exponential-growth-of-disruptive-technology-b5c979608c9c

チャットボットライフとの提携により、翻訳し掲載しています。
チャットボットライフとは、最新のボット、AI、NLP、ツール等を扱うメディアです。